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半透明なサラダ

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故郷

 
 詩として優秀でなければならない
 という思いが徐々に滲んできた秋の薄暮
 確かに「詩のなかは息苦しい」のかもしれない
 残念がるぼくたちは
 誰かの表情を埋めるための偽善なのかもしれないね
 くすんだ故郷が痛がり始めて
 藁や、ビードロや、炭の跡が
 こころからぽつぽつと浮かんでくるね
 でも掛け声だけはやめられないと
「黄金色の白熱」を見せてくれた君がいるから
 今日も静かな熱病に咳をするのだ、ゴッホ
 
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心象デッサン「秋」

 
 岬に佇み続けるのは酷く孤独だ。ぽっかり空いた胸の穴から、世界への釣り糸だけが垂れている。そうして空幻のなかへ引力を落としこむのは、果たして世代の階調がもたらした進行形の理論であったのか。海はない。ただ宇宙がある。岬もない。ただ崖がある。その崖の僅かな距離に、カミングズの花がある。花は時に遠ざかる。風景へ、心象へ、そうしてJouleに近づいていく。過酸化された懐妊は過呼吸を要求する、フーコー、フーコー、「そうして心の振れ幅を、場当たり的にどうにかして、繰り返すんだ」
 

純粋挽歌

 
 透き通った
 白い 青い 泥は
 こころの純粋をだけ追い詰めた
 国語の教科書の紋切り型も
 グラウンドから聞こえてくる白球の音も
 用意された 病室のスリッパでしかないのだ
 病人はその上側にいる
 自分自身の性圧を押し隠して
 津軽女のような仮面をほどこして
 影もない廊下に佇み 自らの男性器を抱え
 冷たい病症を朗読する
「これが私の顔料ですの…」
 欲望と追憶をないまぜにして
 夜の胚胎に眠れぬ死者だと
 

協奏夜曲

 
 こころの
 忘れられた女の形見が
 迷うことを調べ始めた水線と
 予感の調音を辿る
 産卵の薄影へ波紋を拡げて
 わずか片側に誘われた潮騒を
 宙の小室で膨らませる
――静かな忘却は、
   数えきれない琴音を響かせて――
 貝殻の中の望遠鏡へ
 瞬きと共に消えていく
 

非望の砂

 
 干乾びた噴水が
 薔薇の葉に浮いた水を求めて
 巻いた情念の砂漠を徘徊する
 灰色の石
 の前では
 弔われた仙人掌すら
 花をつけず砂に落ちる
 いったい誰が
 悲風の劈く欲望の精神に
 薔薇と噴水を象嵌したのか
 姿形の違う両者を
 この古代の地に招いたのか
 ただ薔薇に霞む心だけが
 砂の仮象の裡で
 無限の呻きを広げるばかりだ
 

静かな忘却

 
 水の音がする手のひら
 を差し出して 青い道の上で眠ると
 救命ボートから「おーい、おーい」
 
 ああ、助かった
 何となく
 私の手のひらが棺に見えていたんだ
 
「おーい、おーい
「君も一人か
「もし宜しければ一緒に行かないか?
 よろこんで
 
 きっとこの広い暗い霧色の海の上で
 手のひらを差し出すことももうなくて
 陽炎に包まれて 私は眠るのだ

詩の地平


 すべての都市に原爆を落としたい
 それがわたしの詩的動機だ
 
 愛と憎しみが共存するナイフで
 この世の表層を抉って
 刃にのった土くれを 眺め、愛玩し、
 舌先にのせながら 口に含む
 刃ごと食べてしまう 断崖だけ残して
 呑み込まない 咀嚼する
 口内は焼夷弾の痕
 永劫に映し出される舌
 一瞬の時雨時に
 オーボエを大音量で弾きながら
 詩の地平を行くのだ


水流間

 
 水流間はヴィーナスの居る所
 女神の乳房の流れに
 魚も僕も笑った
 シャルル・ド・ゴール広場の噴水に
 円盤の太陽と水霊をうたう幼子が
 聖堂に駆けていく
 静かに鶴が舞い降りた
 

        
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