静かな忘却 Category:現代詩 Date:2012年07月13日 水の音がする手のひら を差し出して 青い道の上で眠ると 救命ボートから「おーい、おーい」 ああ、助かった 何となく 私の手のひらが棺に見えていたんだ 「おーい、おーい 「君も一人か 「もし宜しければ一緒に行かないか? よろこんで きっとこの広い暗い霧色の海の上で 手のひらを差し出すことももうなくて 陽炎に包まれて 私は眠るのだ PR
詩の地平 Category:現代詩 Date:2012年07月11日 すべての都市に原爆を落としたい それがわたしの詩的動機だ 愛と憎しみが共存するナイフで この世の表層を抉って 刃にのった土くれを 眺め、愛玩し、 舌先にのせながら 口に含む 刃ごと食べてしまう 断崖だけ残して 呑み込まない 咀嚼する 口内は焼夷弾の痕 永劫に映し出される舌 一瞬の時雨時に オーボエを大音量で弾きながら 詩の地平を行くのだ
水流間 Category:現代詩 Date:2012年06月23日 水流間はヴィーナスの居る所 女神の乳房の流れに 魚も僕も笑った シャルル・ド・ゴール広場の噴水に 円盤の太陽と水霊をうたう幼子が 聖堂に駆けていく 静かに鶴が舞い降りた