こだまさおりの作詞システムの考察2 Category:考察 Date:2014年07月05日 先回の考察に引き続き、作詞家・こだまさおりさんの作詞手法の考察をしていきます。 今回の対象になる曲は『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』のOP曲「BINKAN♡あてんしょん」です。作曲者・高田暁さん、歌手は声優の橋本ちなみさん、小倉唯さん、金元寿子さんです。 では、前半は母音中心の押韻理解、後半は母音理解をベースに、子音を混ぜた押韻理解で考察を進めていきます。 ○ ○ ○ >(BINKANにあてんしょん 気づいてよ) inani aenon iuieo >(BINKANにそりゅーしょん)ジワジワきてる inani ou-on iaiaieu まず注目されるのが「あてんしょん」と「そりゅーしょん」の押韻です。 それ以外の母音押韻は見当たらないように思えますが、「び~ん」→「きづ」という母音の圧縮押韻の可能性や、「びんかんに」の「inani」という左右対称となる音韻配列が気になります。 左右対称の音韻配列は、「じわじわき」の「iaiai」が存在することから、特に注目すべきだと感じます。 また「そりゅーしょん」も「ou-on」という形をしています。このようなタイプの音韻配列にも注視すべきでしょう(※n音はu音として扱う場合があります)。 >ココロ亜熱帯注意 雨季・雨季 ナミダ予報士 Tell me oooa-e,aiuui uiui aiaooui eui- >(雲行きは・成り行きは)あたし天気になあれ(天まかせ・運まかせ) (uouia aiuia)aaieniiaae (enaae unaae) 一行目は「あねったい」と「なみだ」で「ai」の押韻。「ちゅうい」「うき・うき」「よほうし」「てるみー」で「ui」の押韻をしています。また「こころ」と「よほうし」の「oo」も押韻していると考えられ、押韻が複雑に交互していると言えます。 また二行目は若干歌唱の面で複雑になり、字の文の歌詞と、丸括弧内の歌詞とが分かれるようになります。そのため、対応関係がどのようになっているかに注意をする必要があります。 字の文の歌詞だけの対応を見ると、一行目の「ai」の押韻を引き継いで「あたし」と言えますが、それ以外の音韻の説明が難しくなります。そのため、ここでは丸括弧内の歌詞が、字の文の歌詞にも影響を与えていると考えます。 丸括弧内の音韻を見ていくと、「くもゆきは」「なりゆきは」が「uia」で押韻しているのが分かりますが、注目したいのは「なりゆきは」です。「なりゆきは」は「aiuia」という左右対称の音韻配列になっています。また、一行目の「ai」の押韻から「なり」が「ai」で、次の「あたし」の「ai」の押韻への繋ぎの役割もなしています。 また「てんきになあれ」の「aae」は、「てんまかせ」「うんまかせ」の「aae」に繋がっています。 >キミは温暖化の温床 ハートは問題を叫ぶんだ iiaonanaoonou a-oaonaioaeuna >(つきあって・むきあって)責任(くれるでしょ?)とってよね! (uia,e uia,e)eiin(ueueo)o,eoe まず「おんだんか」「おんしょう」「もんだい」の「on」の押韻が見えます。しかし一行目の問題は押韻よりも音韻配列にあります。まず「おんだんかの」の「onanao」であり、左右対称にほど近い音韻の配列になっています。また「はーとはもんだいを」も同様に「a-oaonaio」となっており、同じ音韻を使い回しています。この結果、全体で「きみ」以降連続して「a,o,n,u」の音韻が使用され、重低音的な音のイメージが増幅し、それが「さけぶ」の「e」によって変化し、音韻が転調している印象を受けます。 二行目は「つきあって」「むきあって」が「uia,e」で押韻。全体的に「e」が多く、前行の転調を受けて「e」が強調されているのではないかと感じます。 >きゅんとするのは 誰のせいなの 影響はもう甚大 unouuoa aeoeiao eiouaouinai >戻れないと知っていても せめてもの悪あがき?(しちゃう) ooeaio i,eieo eeeooauaai(iau) >そっちから振り向いて o,iaa uiuie まず「きゅんとする」が「unouu」で左右対称の音韻配列になっています。「だれのせいな」も、途中に「i」はありますが「aeoeia」となっていて、左右対称に近い音韻配列です。 さて「えいきょうはもうじんだい」が問題になってきます。StylipSの「MIRACLE RUSH」の「サジェスチョン」と同じにおいがします。おそらく「えいきょう」は、「せきにん」と「だれのせい」の「ei」から、「えいきょうはもう」は「ouaou」という音韻配列的な理由から来ていると思われます。しかし「じんだい」は分からない。これ以前の歌詞全体を見ても、似た配列の音韻は「びんかん」か「もんだい」くらいしかありません。となると、ここまで出てこなかったタイプの音韻配列を、こだまさおりさんが意図的に選択しているという可能性も考えられます。しかし、そのような語彙選択で、果たして「じんだい」のような印象的なフレーズを思いつけるかどうかは疑問が残ります。 次に「もどれないと」「しっていても」は、「もどれ」と「しって」の「e」の対応と、「ないと」と「いても」の「o」の対応が見えます。次の「せめてもの」が難解ですが、これは先述の「e」「o」の音韻に呼応するかたちで「eeeoo」と選択されたと考えることができます。また「わるあがき」は「ものわるあがき」と理解することで、「ooauaai」となっており、先述の「a,o,n,u」の低重音の音韻への転調と考えることが可能で、「しちゃう」も同様の処理だと思われます。 それは三行目の「そっちから」へ繋がり、「i」の音韻を徐々に増やしつつ「ふりむいて」の「e」の音韻へと渡しています。 >胸のおくがキミを選ぶの BINKANにねキミを感じてる ueoouaiioeauo inanieiioanieu >女の子のヒミツ まだホントは教えたくないのに onaoooiiu aaonoaoieauaioi 一行目は、ぱっと見で分かるほど明らかな対応関係にある押韻は見当たりません。しかし、「むねのおく」の「ueoou」や「をえらぶの」の「oeauo」のような、一音外れの左右対称とも見なせる音韻配列が見えます。「びんかんに」の左右対称も見逃せません。 二行目は、「おんなのこ」と「ほんと」が「on-o」の押韻関係にあります。「だほんとは」の「aonoa」の左右対称も見えます。個人的に「のひみつ」の「oiiu」と「おしえたく」の「oieau」が、「oi-u」の展開押韻ではないかと気になります。「oi」は最後の「のに」にも繋がります。展開や圧縮の押韻は、音をどうでどう切り取るかで判断が揺れるので、難しいところです。 >反応の半径は(ドキドキ)限りなくゼロ地点へ anouoaneia(oioi)aiiau eoiene >あ・て・ん・しょ・ん♡ aenon 「はんのう」と「はんけい」の「an」の押韻が見えますが、「かぎりなく」の「au」とも対応していると考えられます。また「どきどき」は前行の「oi」の押韻から来ていると思われます。しかし、それ以外の音韻はなかなかどういう理屈で構築されているのか判断が難しいです。 二行目の「あてんしょん」は、「ぜろちてんへ」の「en」からの導引だと考えられます。 以上が母音中心の押韻理解になす。後半は「子音を考慮しつつ、母音押韻をどう理解するか」はまたいずれ。 PR